聴覚彼女

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女子三年会わざれば刮目して見よ - petit milady『CALENDAR GIRL』

 


petit milady(プチミレディ) - 3rd Album『CALENDAR GIRL』全曲試聴動画 #プチミレ ##プチミレディ良い曲だな

CALENDAR GIRL(通常盤)

CALENDAR GIRL(通常盤)

 

 

 悠木碧さんと竹達彩奈さんのユニット、petit miladyの活動3年目の3rdアルバム『CALENDER GIRL』がリリースされました。二人の強い個性をぶつけあった濃厚な作品だった過去2作からさらに飛躍し、それぞれの個性の調和が深まり、その個性の総和に留まらないpetit miladyとしての魅力をさらに増した作品が生まれました。

 本作はシングル2曲の実際のタイアップに加えて、他の収録曲にも全て"仮想のタイアップ"がつけられています。全ての曲をシングル級のメイン曲として扱おうとする姿勢が見て取れとれるとともに、全12曲をカレンダーに見立ててアルバムを構成することによって、ベストアルバム的なインパクトとコンセプトアルバム的な統一性を両立させようという試みがなされています。

 

 今作の魅力は、大きくレベルアップした二人の歌唱力、お互いの声の魅力を引き出そうとコントロールされるようになったバランス感覚、そしてぐっと洗練され焦点の定まった楽曲たちです。

 アルバム前半部は、従来のプチミレのパワフルでコミカルな路線を踏襲しながら、以前の過剰なまでの濃厚さと喧しさは抑えられています。歌唱力の進化が肌で感じられるのがtr.2「大好き、ありがとう」。特に竹達さんの声の柔らかな包容力が引き出されていて、二人の息の合ったヴォーカルによって静かな波をゆっくりと広げていきます。tr.3「rainy! rainy! rainy!」では、サビのピチカートの音色に呼吸を合わせるように、パワフルさは保ったまま二人の声のバランスをとるようにナチュラルに歌っていて、全力で互いの声をぶつけていた1stと比べると確実な変化が感じられます。

 アルバム後半部は、petit miladyの新たなチャレンジと言えるミッドテンポの打ち込み曲が新たな二人の魅力を次々に導き出していきます。tr.7「はろうぃんあるばいたー」はSUPA LOVE所属の中村瑛彦さんによる華やかでバウンシーな4x4ハウス。tr.8「SNOW // SLASH」は同じくSUPA LOVEのhisakuniさんによるtrap的なハイハットやスネアの連打に加えてダブステップ的な重厚なハーフステップパートが挿入される、シリアスでスタイリッシュな一曲です。tr.9「聖シルヴェストルのテーブル」はファルセットヴォーカルで煌びやかな世界観を描き出すフィルターハウス的な曲。そしてこの流れにとどめを刺すのがtr.11「チョコレイト・ブギウギ」。tr.8と同じくhisakuniさんによる曲で、オリエンタルなハープの音色とともに、乾いたドラムが力強く跳ね回り、フレンチポップス meets ポストロックとも言うような、従来からの楽しく力強いプチミレと、新機軸のキュートで華麗なプチミレが高いレベルで昇華融合されています。

 

 それぞれソロ活動でも、悠木碧さんは『イシュメル』、竹達彩奈さんは『Colore Serenata』という声優アーティスト史上に残るような素晴らしい作品をリリースしていますが、petit miladyにおいてもソロでは表現できないポップでキャッチーかつエレガントな表現を3年目の3rdアルバムでしっかりと確立させました。

 楽曲レベルで大きな変化が伝わる曲をピックアップしましたが、実はtr.1「青春は食べ物です」tr.10「クジラの背中」tr.12「桜のドアを」のようなユニゾンで歌うロック曲こそが、お互いの理解の深まりと二人のヴォーカルの表現力の成長を確実に伝えていて、その部分もこのアルバムの良さであるように思います。

 

(DJ声優パラダイス